子供はスペシャリストとジェネラリストのどちらに育てた方がいいのか。専門家養成の危険性とは。
日本教育再考
Google
amazon.com
トップページ | 記事拾い読み | 教育再考図書館 | 教育相互リンク集 | プロフィール | 徒然想

子供はジェネラリストに!

←過去の配信号一覧へ戻る
……………………………………………………………………………………………
【子供達に教えたいこと】〜日本教育再考 <http://www.saikou.info/>
……………………………………………………………………………
2002/04/11号

▼お知らせ

・方言万歳
 サイトが、方言でご覧頂けるようになりました!過去の記事が面白いです。

 大阪弁:<http://www.yorosiku.net:8080/-_-http://www.saikou.info>
 幼児語:<http://tinyurl.com/f0cj>

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼前号の【教育名言】

「タンポポの国」の中の私 ― 新・国際社会人をめざして

 人間は教育を通してしか人間になれない。
  人間は最終的に自分が受けた教育の以上にも以下にもなれない。 カント

 これはトルシエ監督の通訳であるFlorent Dabadie氏が書いた表題の本に、
 最初に引用されていました。「教育学論」という本に載っているそうで、私
 でさえ聞いた事があったので、教育界の人にとっては基本的な知識なのかも
 しれません。孫引きです。

 まずこれを冒頭に持って来ているのを見ても分かる通り、サッカーやトルシ
 エ監督のチーム経営などを例にあげた教育論になっています。日仏の比較文
 化論、サッカー論としても読めますし、著者が映画雑誌社に勤務している為、
 映画論としても読めるという、1時間程度で流せるお得な本でした。

 「自分の国の文化を守り、保全するのは当然のことで、半ば義務です。自国
 の文化に誇りを持つのも当然です。」としつつもナショナリズムを斬ります。
 以前弊誌でも指摘した通り、東大早慶の学生がただのフツーの学生であって、
 日本にエリート教育が無い弊害も指摘しています。

 大衆の無知が政治の混迷の原因である点や、教養教育をおざなりにしたアメ
 リカの問題点も取り上げており、小生の主張と重なる部分が多々ありました。

 6カ国語を操るだけでなく、引用する書籍は古典ばかり。彼の受けた教育の
 片鱗が伺えるとともに、いかに教育によって人が違うステージに行けるのか
 を示してくれています。著者はかなりの親日家で、日本文化に関する記述で
 は小生が理解できない部分も多く、恥ずかしかったり。飛ばしちゃいました。
 人生、死ぬまで勉強ですね。今からでも遅くないと信じて頑張ります。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼子供達に教えたいこと

・【経営学的見地から見た「専門家」養成の危険性】Early Adaptor & FMA

 と難しげに入ってみたものの、ここで経営学をやるつもりはありません。
 スペシャリスト(専門家)とジェネラリスト(万能選手)のどちらに育て
 るのがいいのか、様々な立場があり、似たような議論が毎日のようにどこ
 かで繰り広げられているように感じます。どうすりゃいいんでしょう?

 2002/02/25号の日経ビジネスにあった堺屋太一氏インタビューを引用しま
 すので、立ち止まってちょっと考えてみて頂けますでしょうか。

「終身雇用を肯定する人がいます。しかし、終身雇用では、18歳とか22
歳で選択した職業に生涯従事しなければ損をするわけです。嫌いな仕事や嫌
な人間関係のため、埋もれてしまった個性は何千万人といたはずです。」

 これって「早いうちに専門教育を行う」ことによる弊害と共通していませ
 んか?夢を持つのもいいですが、あまりに若いうちに将来の道を狭めてし
 まっては不幸になる可能性がある人が大半でしょう。「夢」というカッコ
 イイ言葉に流されすぎて、本当に夢を掴むための教育をしていない大人が
 多いのではないでしょうか。

 たとえば、「サッカー選手になりたい!」いいですね。そりゃ頑張って欲
 しい。ただ、だからと言って選手になりたい子供たちを全員ブラジルに留
 学させては、一部の天才以外は夢が掴めないのが明らかです。これは運動
 をやっていた経験のある人はよく分かると思います。

 直接その道で才能が無くても、トレーナーになったり、通訳になったり、
 サッカービジネスを立ち上げたり、他にもサッカー狂には道があります。

 ただ、そのためにはサッカー技術以外の広範な知識も必要なのですが、意
 外と軽視されている。ジェネラル(一般教養的)な勉強も大事なんです。

 これが弁護士や医者などの士業ですと勉強する本人だけでなく、社会にも
 弊害を及ぼすことになる。若いころから一つのことだけに集中していると、
 社会性が失われる。法曹界、医学界の思考方法に染まり、社会の常識が通
 用しなくなる。山形県マット死事件の民事訴訟で被告を無罪にしたりもす
 る。<http://www.sankei.co.jp/news/020320/morning/20na1001.htm>

 また、子供のころは世間の事など知る術が限られています。目の前に飛び
 込んでくるものが全て。大人ですら知らない職種や会社だらけなのに、子
 供たちが指針や知識も無いままに、自分がもっとも興味ある事を探し出す
 のはほとんど不可能である。野球の存在を知らないままにサッカー選手を
 目指し、40歳になって野球の存在を知り、野球の方がよほど面白い事に
 気づく。そんなことがあっては子供たちは不幸きわまりない。

 「子供が好きな事をやらせる」「夢を追って欲しい」という美辞麗句に踊
 らされ、野球の存在を知らせなかった両親を断罪するのは簡単ではあるが、
 「野球の存在を知らない」サラリーマンは今も普通に存在する。さらに上
 記のような間違った放任主義をモットーとする親が少なくない。

・やっと経営学もどきがちょこっと登場

 これは企業でも近い議論がある。FMA(First Mover Advantage)の事だ。

 日本語だと先行者利益のことだろう。最初に動いた企業が優位である、と。
 つまり最初に特定市場に進出して、その道の専門家になるための多大な投
 資をすることによって後発企業を引き離すわけだ。

 ただ、初期に軸足を決めてしまうのは危険も伴う。確かにネット書店のア
 マゾンドットコムなどはこれで成功した例であるが、同様に失敗例もある。
 日本で真っ先にネットで少額決済サービスを提供したアコシスは先月、サ
 ービスを停止した。<http://www.acosis.com/>

 世界最古の電子マネー大御所、モンデックス<http://www.mondex.com/>も
 怪しいが、マスターカードに買収されてやっと生き延びた感じでしょう。
 単に市場性の無いところへ進出してしまって失敗した、とも言えるが、こ
 れは人生に於いても起こることかもしれない。

 そんなものがあるかどうかは別として「絶対に成功する(儲かる)」市場
 に進出するのであれば、FMAはあるでしょう。それでもSecond Moverにノウ
 ハウを低コストで真似されて、追い越される可能性があります。

 子供一人の人生、もちろん「絶対に成功(ってナニ?)」すると確信でき
 る道などあるわけもありません。そんな中で早期にスペシャリストを目指
 させる、もしくはポリシーも無く放置するのはいかがなものか。あなたや
 あなたの子供がアマゾンドットコム(天才)であれば心配はないが。

 これ、生活者側の消費行動でも同様の事が言われています。最初に新商品
 に飛びつく人たちをEarly Adaptor(直訳は初期適応者、でしょうが、アー
 リーアダプター、とそのまま使います。さらに前のオタクはInovator)と
 言います。彼らはある種、尊敬される対象であり、企業としてはこの辺の
 層に喰いついてもらって、いい評判を広げてもらわないと困る。

 でも、早めに喰いつく方としてはリスクも高い。その商品自体、大失敗か
 もしれないし、将来的に周りが誰も使ってないがために、ゴミ同様になる
 かもしれない。何も考えずに初期のうちにスペシャリストを目指すという
 のは、リスクを背負うという事に他ならない。リスクを背負うのもいいが、
 子供の場合、そのリスクすら理解していないので、それを親として教えな
 いのは無責任以外のナニモノでも無い。

 まとめると。幼少の頃からスペシャリスト志向で育てると、将来失敗する
 リスクが高い。成功したとしても他の分野に行けばよかった、と後悔する
 可能性も高い。さらに、成功して天職だったとしても、世間の常識をはず
 れ、「人の感情」を理解できなくなる可能性が高い。

 ということです。最後の例としてはマット死事件を挙げましたが、理系の
 方々がよく言われる部分ですね。「社交性が無い」と。無くてもいいけど。

・じゃあどうするか

 天才の方々についてはひとまず置かせて下さい。アメリカ式も良いところ
 は勿論あり、英才教育の大事さも痛感しているので、それはまたの機会に、
 ということで。

 で、我々凡人としてはスペシャリストを目指せばいいんです。んっ?と思
 うでしょうが、これにはジェネラリストになること、という前提がありま
 す。つまり、若いうちはジェネラリストを目指し、その中で得た知見によ
 って、最終的に専門を決めて深化させていく。

 現在、日本の専門家にはどちらかというとI字型スペシャリストが多い。
 専門バカとも言う。これを、T字型スペシャリストへ移行すればいい。書
 き順もそのままです。まずは横に幅広い知識を修得し、その中から気に入
 ったものをオタクに掘り下げていく。これならI字型の弊害は発現しない。
 平均台を歩く時、手を横に広げるでしょ?バランスが大事。

 そういう点からすると、前号で取り上げたように、中教審が「新しい時代
 における教養教育の在り方について
」として教養教育に重点を置いたのは
 評価できる。
 来年から東大工学部が会計、財務、リーダーシップ等を学生にたたき込む
 とのことだが、これも素晴らしい。次は文系学生に物理必修か。本当の専
 門は大学院以降で十分。ただし、家庭環境や事情は人それぞれ異なるわけ
 で、国がそれをできうる限りサポートする必要がある。小生が国公立学校
 の一律民営化に反対である所以だ。学校間競争はどうしても必要だが。

 天性の才能を持っていて幼少時からの英才教育に向いていたり、幸いにし
 て幼少のころから、夢の職業に出会ったりする人間がいるのも否定はしな
 いし、応援したい。ただ、それだけでは大多数の人間は困ってしまう。凡
 人は若いうちに広範囲の、あらゆるものを詰め込まないといかんのだ。
 未だに専門を持っていない凡人ジェネラリストのつぶやきでした・・・。
                            4月9日【海】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼メディア教育

・休刊日って何?──新聞業界の公然の秘密

 他業界の事はどんな小さなことでも叩くのに、自分たちの業界については
 何も語らないんですよね。他人に厳しく自分に甘いってどんな公器なんで
 しょうか。げ。今見たら、紹介したい記事の結論と全く同じでした。

 ワン・トゥ・ワン・マーケティング協議会の記事:
 <http://www.1to1.ne.jp/wind27.htm>

───────────────────────────────────
【編集後記】先日、結婚式で「皆様ご着席くらっさぁ〜い」と言う牧師がいた。
「くらっさぁ〜い」の連発で笑いそうに。そんな漫画があったような(うみ)
───────────────────────────────────
発行者:大坪 海治 <kaiji@saikou.info>
配信システム:まぐまぐ <http://www.mag2.com/>
配信登録・解除はこちら↓でご本人様の手にてお願い致します:
★日本教育再考ウェブサイト<http://www.saikou.info/>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
メールマガジン登録フォーム
【登録】子供達に教えたいこと
電子メールアドレス(半角英字):
↑このページの先頭へ戻る
ご意見・ご感想は大坪海治: kaiji@saikou.info まで
Copyright(c) Saikou.info - 日本教育再考 2001-2003 All Rights Reserved.