リサーチリテラシーやメディアリテラシーなどの情報・メディア教育の関連記事。各種調査やデータの読み方。
日本教育再考
Google
amazon.com
トップページ | 記事拾い読み | 教育再考図書館 | 教育相互リンク集 | プロフィール | 徒然想

情報・メディア教育

←テーマ別記事の一覧へ戻る

▼データの読み方(学習基本調査を受けて)
▼就職希望度をどう読むか(バイアスについて)
▼大学生人気企業ランキングをどう読むか(母集団について)
▼現行教科書は自虐的か?(悪問の好例)

▼データの読み方(学習基本調査を受けて)

 小中高校生を対象にした学習基本調査の結果が先日、ベネッセ教育研究所
 から発表されました。概要を<http://www.crn.or.jp/LIBRARY/GAKUSHU/>
 でご覧頂けます。こういう調査を参考にしつつ、実際の数字と自分の感覚
 のずれを修正することは常に必要なことなのですが・・・。

 「学校の授業をどのくらい理解していますか」という設問に対して「わか
 っている」とした小中高校生の時系列での回答比率は以下の通りでした。
 第一回調査は1990年、第二回調査は1996年、今回の調査が第三回になりま
 す。以下では算数/数学と国語だけを抜粋しております。なお、表中の算
 数は「算数数学」の略です。

         ┏━━━━━━┳━━━┳━━━┳━━━┓
         ┃      ┃第一回┃第二回┃第三回┃
         ┣━━━┳━━╋━━━╋━━━╋━━━┫
         ┃   ┃国語┃62.9%┃67.0%┃71.2%┃
         ┃小学生┣━━╋━━━╋━━━╋━━━┫
         ┃   ┃算数┃62.4%┃60.3%┃69.1%┃
         ┣━━━╋━━╋━━━╋━━━╋━━━┫
         ┃   ┃国語┃45.7%┃47.0%┃53.4%┃
         ┃中学生┣━━╋━━━╋━━━╋━━━┫
         ┃   ┃算数┃46.4%┃52.4%┃53.5%┃
         ┣━━━╋━━╋━━━╋━━━╋━━━┫
         ┃   ┃国語┃37.7%┃41.3%┃44.9%┃
         ┃高学生┣━━╋━━━╋━━━╋━━━┫
         ┃   ┃算数┃34.6%┃31.6%┃32.6%┃
         ┗━━━┻━━┻━━━┻━━━┻━━━┛ 
 11月7日付けの「毎日教育メール」で東京私学教育研究所長の堀一郎氏
 が「調査データをどう読むか」というコラムでこの調査を取り上げました。
 「わかっている」の割合が概して上昇している事から、(以下引用)
 小学生は全教科で上昇、高校生も国語、理科、英語でほぼ同じ傾向、数学も第1回
よりは低いが第2回よりは上がっている。『子どもたちは学校の授業がわかるように
なっている』ことをデータが示しているのだ。「学校の荒廃は進む一方」という社会
的な空気が強い中で、学校で「わかる授業」の実践が進んでいるのだとしたらとても
うれしい。

 ちょっぴりではあるが、最近では初めて見るような教育現場での明るいデータ。連
続調査をしているベネッセ教育研究所に敬意を表したい。

 (以上、段落替え等、全て原文のまま)と結論づけています。さて、私が
 最初に受けた印象は全く逆です。「そこまで授業のレベルを落としている
 のか」と。優生学でもあるまいし、現在生まれてくる子供の方が昔の子供
 より理解力が遺伝的に優れている、などという事はあり得ません。また、
 教師の質がめざましく改善した、と考えるのにも無理があるのではないで
 しょうか。そうなると、授業を「わかっている」子供の率が上昇している
 のは、授業の質を落としているからであるのは明らかでしょう。ある意味
 ではこれは「学校の荒廃」が進んでいる事を示したデータであると言えま
 す。堀氏は新学習指導要領の改悪に対して懐疑的なようで、私と同じ立場
 でして、堀氏を非難しているわけではありませんし、そういう趣旨の記事
 でもありません。ポイントは「データは読み方で全く結論が異なる」とい
 う点です。

 決して明るくないデータでも、明るいデータのように受け取ってしまう可
 能性があります。特に元のデータを見ないで他人の記事から情報を入手す
 る場合に間違った理解をしがちですが、元のデータを見ても安全とは言え
 ません。教育分野は特に抽象論でものが語られがちですが、たまに使った
 データから間違った結論を導いてしまっては、いつまでたっても教育界は
 改善の方向に向かうことができません。では、どうすればいいのか?

 リサーチリテラシーの獲得が「必修」であると筆者は思っております。入
 門として大阪商業大学学長、谷岡一郎教授の『「社会調査」の嘘』(文春
 新書)がお薦めです。お薦めというよりも、親・教師など、人を教える立
 場にいる人は最低限読まないと「教える」という行為に対する責任を放棄
 していると言ってもいいでしょう。読めばわかります。良書です。

 最後に堀氏の名誉のために擁護しておきますと、後段で中学生の学力低下
 を暗示してらっしゃいます。無論、私の上記の議論は承知の上での文章で
 あるのも分かります。東京私学教育研究所長という職業柄から、谷岡教授
 のしてらっしゃる主張は全てご存じでしょう。私も「新発見」はありませ
 んでしたので。ただ、堀氏の文章に接した事がなく、かつリサーチリテラ
 シーの素養の無い方は誤解して読まれる事もまた確かでしたので、取り上
 げさせて頂きました。ちなみに「リサーチリテラシー」とは谷岡教授の唱
 えているもので「調査等を読み、使いこなす能力」のようなものです。
↑メニューに戻る
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼教育関連調査データをどう読むか(2)

 最近発表された使えそうな調査を紹介する形で、前回よりも簡単に私見を。 

・第2回青少年の生活と意識に関する基本調査
 先日、内閣府より発表された調査でして、以下で概要がご覧頂けます。
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/seikatu2th/top.html

 勉強しない学生が増えている、ということなどが結果として出ていますが、
 ここで見たいのは「職業関係」の項の22-24歳。「就職する意志はない」
 とした学生が前回調査の6.5%から7.6%に増加しています。この1%程度
 の増加が意味ある増加かどうか(調査の誤差の範囲内かもしれない)とい
 う点ですでに議論が別れるでしょうし、そういう疑問は健全だと思います。

 で、増加している、という前提で見た時に、「最近の若者はだらけている
 から云々」という印象を持ちがちですが、それはちょっと違うかもしれま
 せん。Weekly Educational Eyesの2001.11.24号のコメントにありました、

 ----------------------------------
 就職観では、22〜24歳で「就職する意思がない」が7.6%となっている。こ
れは、単に職業観が変わったというものより、現実の就職場面で直面している
困難な姿を映し出しているのではないか。
 ----------------------------------

 というのが考え方としては真実に近いでしょうね。就職はしたいけど、こ
 の不況ではできないだろう。それならば、就職したいのにできないという
 哀れがられる状態ではなく、自らの意志で「就職する気がない」と宣言し
 た方がかっこいい。調査をされている青少年の側にそういう心理が働く可
 能性が強い。特にこの調査だと「調査員による個別訪問面接調査」という
 手法をとっています。質問をしている人間が目の前にいるわけです。恥ず
 かしいことには嘘をつきやすくなりますよね。

 このように、調査結果を見る時は、結果をそのまま鵜呑みにするだけでは
 なく、その調査に答えている人の心境による調査結果のずれや、どのよう
 な調査手法を使ったのか、という点にも注目する必要があります。色々な
 調査結果をもとに安易に教育を論ずるのは危険なので、次回は「母集団」
 という概念を理解するための記事をお届けします。
↑メニューに戻る
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼教育関連調査データをどう読むか(3)

 前号の予告通り、調査結果を見るときに「母集団」を意識しなければなら
 ないとはどういうことなのか、教育絡みの調査を参考に簡単に解説します。

・就職人気企業ランキングに見る母集団の違いについて

 12月に入り、大学3年生の就職活動も本格化し始めたようです。昔では
 考えられない早さですよね。毎年、各社によって大学生の就職人気企業の
 ランキングが発表されますが、調査を実施する会社によって、企業の顔ぶ
 れが大分異なる事にお気づきの方も多いかと存じます。

 ここではリクルート、毎日コミュニケーションズ、ダイヤモンドの各社が
 発表しているランキングをもとに、母集団(調査を実施した対象の集団)
 の違いがいかに調査結果に影響を及ぼし、データの読み方が変わってくる
 のか、についてお話します。さて、以下がランキングになります。

  2001年度 文系人気企業上位3社
 ┏━━┳━━━━━━┳━━━━━━┳━━━━━━┳━━━━━━┓
 ┃順位┃リクルート ┃毎日就職ナビ┃毎日就職ナビ┃ダイヤモンド┃
 ┃  ┃(文系全体)┃(文系全体)┃(文系男子)┃(文系男子)┃
 ┣━━╋━━━━━━╋━━━━━━╋━━━━━━╋━━━━━━┫
 ┃ 1┃ソニー   ┃JTB   ┃NTTドコモ┃ソニー   ┃
 ┣━━╋━━━━━━╋━━━━━━╋━━━━━━╋━━━━━━┫
 ┃ 2┃電通    ┃日本航空  ┃ソニー   ┃三井住友銀行┃
 ┣━━╋━━━━━━╋━━━━━━╋━━━━━━╋━━━━━━┫
 ┃ 3┃本田技研工業┃NTTドコモ┃トヨタ自動車┃東京三菱銀行┃
 ┗━━┻━━━━━━┻━━━━━━┻━━━━━━┻━━━━━━┛

 まずリクルートの調査ですが、これは同社が運営しているリクナビという
 サイトに登録しているユーザーに対してインターネット上で調査をしたも
 のです。インターネットユーザのみなので、ある程度意識が高く、また、
 パソコン利用環境の良い大手大学が中心になります。データは事情があっ
 て公開はできないのですが、残念ながら大学の偏差値とそこの生徒のイン
 ターネット利用率というのは比例しているという事実がありますので、い
 わゆる一流大学の中でも就職意識が高い人間が母集団になり、「バブリー」
 な結果になることが予想されます。(以下、リ社の調査と表記)

 次に毎日コミュニケーションズの調査ですが、これは同社の運営している
 毎日就職ナビ、というサイトの会員と、全国の大学生対象に発送している
 情報誌に同封したアンケートを郵送で回収しています。ネット上で回収し
 たのが1061件、郵送が5282件。郵送アンケートは大学をクラス分
 けせずに郵送しているので、全国的な平均値に近い、現実的な意識の結果
 がでる事が予想されます。(以下、毎日の調査と表記)

 最後にダイヤモンド社ですが、ここは郵送調査のみで調査を実施していま
 す。ここはアンケートの発送先の大学がかなり限定されており、全国の国
 公立大学全てと、私大では東京六大学(東京、早稲田、慶応、立教、明治、
 法政)と関関同立(関西学院大学、関西大学、同志社大学、立命館大学)
 のみを対象とした調査になります。よって、意識が高い低いに関わらず、
 学歴的には有利な人々、それも国公立大学の多さから、保守的な傾向があ
 るであろうと予想されます。(以下、ダイヤモンドの調査と表記)

 細かい分析をして行くとキリがないので、それぞれ3位までだけの比較を
 中心に見ていきましょう。各社、発表しているカテゴリーが異なるので、
 一概には比較はできないのですが、専門的な細かい話はひとまずおいて、
 母集団の影響を理解する、という目的のためだけに力ワザで進めます。

 リ社の調査の「ソニー、電通、ホンダ」は至極納得です。有名でイメージ
 もよく、かつ超難関のソニーがトップなのは母集団の自信の現れとも言え
 るでしょう。一昔前までは自社を悪く言う社員がいない、として有名でし
 た。2位の広告会社の電通はCMも無く、全国的には意外と認知度が低い
 会社です。異常な高給とギョーカイ色は学生の憧れの的とは雖も、他社の
 調査でランクインしないのがその内定難度の高さを表していると言えます。

 3位のホンダのランクインは私もうまく説明できませんが、創業者である
 本田宗一郎の哲学に惹かれるだけの前提知識がある学生が多い、という事
 が言えるかもしれません。唯一、電博(電通、博報堂の二大広告代理店)
 が共にベストテン入りしており、学生の情報アンテナの高さをそのまま表
 しています。悪く言えば「バブリー(泡沫的)」な結果です。

 リ社の同分野での毎日の調査結果の「JTB、日本航空、NTTドコモ」
 も母集団の影響を色濃く反映しています。JTBはいい企業ですが学生か
 ら見た「入れそう感」が他の企業群に比べて圧倒的に高いですね。また、
 2位の日本航空は当然全員がパイロットになるわけではないのですが、職
 の内容というよりもブランドで上位に来ているあたり、全国平均的な意識
 といえるのではないでしょうか。上位10社に航空会社が一社も無いリ社
 に対して毎日は日本航空も全日空も共にランクインしています。3位であ
 るNTTドコモはこれまたうまく説明できないのですが、平均的な学生像
 ということで「ITブーム、携帯ブーム」に安易に流された結果、とでも
 言うのでしょうか。よく言えば、どれも堅実な選択ではないでしょうか。

 最後のダイヤモンドの調査結果の「ソニー、三井住友銀行、東京三菱銀行」
 も納得できすぎる結果ですね。ソニーはリ社の結果と同じです。違うのは
 全員郵送調査で、かつ国公立中心(人数はマンモス校ベースの私大が多く
 なりますが)なので保守的な点ですね。金融業界のビッグ4から2グルー
 プがランクインしており、10位以内には日銀まで入っていますね。「い
 い大学行って、銀行マンになるのよ」という昔からの神話による教育が透
 けて見える結果になっていますね。2大商社の三菱商事・三井物産もダブ
 ルランクインしており、古き良きニッポンの重厚長大イメージな企業が占
 める割合が高くなっているのは、母集団の性格と全く重なります。ただ、
 さすがに一流大学のみの調査ということで、50位以内に外資系コンサル
 ティング企業のアクセンチュア(旧アンダーセンコンサルティング)、マ
 ッキンゼー、ボストンコンサルティングの三社ともランクインしているの
 に対し、毎日の同じジャンルでは50位以内はアクセンチュアのみです。

 こうして見ると当たり前の事なのですが、母集団と調査結果というのは、
 全く同じ種類の「大学生人気企業ランキング」という題材であっても、全
 く異なる性格を持ちます。それなのに、マスコミで例えばダイヤモンドの
 調査結果が出ると「今年は金融業界が人気!」だとか見出しに踊るわけで
 す。いかに調査結果だけを鵜呑みにして何かの傾向を語ってはいけないか、
 理解して頂けたかと思います。

 教育に関わる方、という母集団からして実はあるバイアス(偏向)がかか
 っているのですが(調査結果の解釈力が弱い等々)、そういう方がさらに
 バイアスがかかった調査結果を元に議論をしてしまうと、取り返しがつか
 なくなります。そういう同僚を見かけましたら、美しく反論して、みなさ
 まが先生となって、調査とは何かを教えてあげてくださいませ。調査に基
 づくどころではなく、個人の狭い世界での経験を一般化して他の世界を認
 めすらしない狭量な方もたくさんいらっしゃいますので、我々の力でリサ
 ーチリテラシー(バックナンバー参照)を普及させましょう!

 ※調査概要を以下のページにてご覧頂けます。
 【大学生の企業イメージ調査2001「就職志望」】リクルート
http://rnavi.isize.com/K2/IMAGE/index.html
【2001年度 全国大学生人気企業ランキング】毎日コミュニケーションズ
http://www.mycom.co.jp/career/web-com/kikakuHP/2001rank/
 問い合わせ先:企画推進課 03-3222-7822
【就活ポラリス 就職人気企業ランキング】ダイヤモンド社
http://ecareer.shupola.com/arti/ranking/best_top.html
 問い合わせ先:ダイヤモンド・ビッグ社代表 03-3560-2121

 ※表のような比較になった理由は各社が以下の通り、調査結果の発表方法
  が微妙に異なるためです。
リ社  文理全体 文系全体 理系全体
毎日       文系全体 理系全体 文系男子 理系男子 文系女子 理系女子
ダイヤ                文系男子 理系男子 文系女子 理系女子

 ※調査畑の方はSAかFAなのか、自由想起なのか等々、細かい点が気になる
  でしょうが、調査法についての記事ではありませんので、興味のある方
  は上記の各概要をご覧になって下さい。当然ながら会社一覧の有無等々、
  五社連記と八社連記など様々な違いがあり、バイアス要因は上記の母集
  団だけではありません。分かりやすさを優先し、母集団のみが順位変動
  要因であると仮定して立論を行いました。
↑メニューに戻る
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

・中学3年「侵略行為を含めて歴史の真実をありのまま載せてほしい」68%

 筑波大の遠藤誉教授らが実施した調査結果。真実とは何か、と考えると難
 しい問題ですけどね。中国が典型例ですが、歴史の真実というのは、時代
 によって変わりますから。河北新報の記事に、
 <http://www.kahoku.co.jp/news_s/20020110KIIASA47210.htm>

 一部の学者らの「現行教科書は自虐的」とする批判には、中学生の多くは
 共感していない。

 とありましたが、これも読みとり方は難しいです。仮に現在の教科書が自
 虐的であったとしましょう。そうなると、当然ながら、その教科書で育っ
 た(洗脳された)人間は、その教科書自体を「自虐的」とは認識できない。

 無論、現在の教科書が自虐的でないと仮定した場合も、生徒は当然の事な
 がらその教科書を自虐的だとは認識しません。

 よって、質問項目を間違えて、何も聞いていないに等しい調査になってし
 まうという「学者が行う社会調査」の典型例です。しつこいですが、調査
 に騙されないように、『「社会調査」の嘘』を読みましょう!
↑メニューに戻る
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
メールマガジン登録フォーム
【登録】子供達に教えたいこと
電子メールアドレス(半角英字):
↑このページの先頭へ戻る
ご意見・ご感想は大坪海治: kaiji@saikou.info まで
Copyright(c) Saikou.info - 日本教育再考 2001-2003 All Rights Reserved.